たかがラーメン」?高級店登場、1杯3000円も

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ラーメンなど5000円のコース料理を前にする「MIST」の森住康二社長=竹田津敦史撮影
 手頃な価格で楽しめる庶民的な料理の代表格・ラーメン。人気店が味でしのぎを削る中、コース料理や1杯3000円と、「高級」をうたう店が現れた。

 有名ブランド店が入居する表参道ヒルズ(東京都渋谷区)内の飲食店「MIST」。抑えた照明が店内に落ち着いた雰囲気を醸し出し、女性客も多い。

 5000円のコース料理を注文した。滑らかにすりつぶした鶏レバーの前菜、生ハムやカラスミを合わせたラーメンスープの煮こごり、細かく刻んだナッツと蜂蜜を付けて食べる天元豚のロースト肉、22時間かけて作った黄金色のスープと自家製めんが絡み合うラーメン……。

 森住康二社長(41)は「ダシの原料など、ラーメンにすると分かりにくい食材を、目に見える形でお客様に提示したかった」という。

 「良い食材でラーメンを作りたい」と、全国を飛び回り、野菜を仕入れてきた。また、交配や飼育場まで指示して養鶏農家と契約し、豚については解体業者に注文を付けるまでの徹底ぶりだ。それだけに、「違いをわかってもらえていない」というもどかしさが、コース料理を提供する動機となったという。

 同じくコース料理を出しているのは、神奈川県海老名市の「中村屋」。月に2日、計8組限定。店主の中村栄利さん(31)の創作料理が味わえる。料金は1万2600円だが、「3か月先まで予約でうまっている状況」(中村さん)という。

 一方、高級ラーメンにこだわる店も登場した。今年5月開店の「藤巻激城」(東京都目黒区)のメニューはラーメンのみ。赤、白、黒の3種類で、1杯3000円だ。

 タイ料理のトムヤムクンをベースに、33種類の食材を使ったラーメンは、複雑な味と多彩な食感が新鮮。店主の藤巻将一さん(40)は、「ラーメン1杯でコース料理を表現した」と自信をのぞかせる。

 約250平方メートルの店内に、カウンター8席のみ。完全予約制で、営業時間も昼夜で計6時間と短い。藤巻さんは「ラーメンはB級という固定観念への、料理人としての挑戦です」と話す。

 ラーメン評論家の大崎裕史さん(49)は、「高級店が急増することはないと思うが、定着すれば消費者の選択の幅が広がる」と歓迎している。しかし、「たかがラーメンなのに、という否定的な意見がないわけではない」(森住社長)ことも現実。高級ラーメン店は果たして市民権を得ることができるのだろうか。(森田睦)